俳句カレンダー鑑賞 平成26年8月
- 俳句カレンダー鑑賞 8月
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畑に転がっている西瓜を拾って帰り、中身を刳りぬいて西瓜提灯として遊んだ...子供の頃の懐かしい思い出である。
刳りぬいた西瓜に思い思いの目鼻を開け、中にローソクを立てる。そこに揺らめく表情を楽しむのだ。
西瓜提灯を詠み、その笑顔を描写した作品は数多くお目にかかるが、その殆どが外側から見た西瓜の表情を詠んでいる。
だが、作者の写生は一味違う。徹底した写生を標榜する作者の目は、西瓜提灯と一体化したのである。そして自らも西瓜提灯となった時に、西瓜提灯が中から外を向いて笑っていることに気がついたのである。
新しい発見である。作者一流のレトリックの冴えと相俟って、新しくそして楽しい佳句となった。(中谷まもる)西瓜提灯中から外を向き笑ふ
後藤立夫
公益社団法人俳人協会 俳句文学館520号より