俳句カレンダー鑑賞 平成26年9月
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八方へ葛城山の芒みち
小島 健阿波野青畝の〈葛城の山懐に寝釈迦かな〉で有名な葛城山は、大阪府と奈良県の境、関西切ってのダイヤモンドトレール(50キロ自然歩道)の半ばにあり、初夏は一目百万本のつつじ、秋は芒原、冬は霧氷で名高い。
頂上からの展望は雄大で、東の奈良盆地には大和三山を望み、西は六甲山地、淡路島を浮かべた大阪湾が望める。
秋には、頂上一面の広い芒原に突如山霧が広がり、幻想的な景になることも多い。
その時、作者の脳裏にはふうっとこの山を包む歴史の様々な一齣が蘇ったに違いない。頂上から八方に伸びる芒道。
東は名刹九品寺、一言主神社。西は西行終焉地の弘川寺、南は楠木正成ゆかりの千早城址の金剛山。北は大津皇子悲史の二上山等々。
芒を靡かせる風の中、高まる詩情に何れの道を下ったのであろうか。 (広渡敬雄)公益社団法人俳人協会 俳句文学館521号より