俳句カレンダー鑑賞 平成26年10月
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「虫送り」は歳時記では秋の季語として記載されているが、地域によっては夏に行われる。村人たちが鉦や太鼓を鳴らしつつ松明を灯し、その火で畦を撫でるようにして害虫を追い払う。
平安時代の武将斎藤実盛は、馬が稲の切り株に足をとられたため打ち果てたという。そのことを恨んだ実盛が、稲の害虫となって現れるという言い伝えもある。虫送りはそうした稲の害虫を追い払い、豊作を祈る行事である。
作者はその虫送りが終わった後の田を見つめている。虫送りに携わった村人も、見学をしていた人々も、そして稲に魂と言うものが存在するならば稲もまた、今年の豊作を確信し安堵の様子を見せているのである。
この句の中に感情を表す言葉は一切ないが、十七文字の外に深い情感が溢れている。三村純也第三句集『常行』所収。
(山内 繭彦)虫送すみたる稲のそよぎかな
三村純也
公益社団法人俳人協会 俳句文学館522号より