俳句カレンダー鑑賞 平成26年11月
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陰暦10月は神無月。全国の八百万の神々が、出雲へ向けて旅立つからである。出雲では神在月。参集した神々は、縁結びの談合をすると言われている。
「勿論韋駄天も、出雲へ向かわねばならない。足の速さでは誰にも負けないが、一刻も早く着くために孫悟空のように雲に乗って行こう(おーい雲よ)と呼び止めた構図である」(『自解水桜句集』)。
時に現実を離れ空想に遊ぶさまは知識を伴い、次々にほとばしり出る連想を愉しむ水桜俳句の向日性が窺える。「雲ひとつ呼び止め韋駄天」の破調も気にならず、功を奏している。
今年の出雲は高円宮家典子様と大社の禰宜千家國麿氏のご婚礼が執り行われた。八百万の神々や人々の祝意でさぞかし賑わったことであろう。平成3年作、句集『天彦』所載。(多々良敬子)雲ひとつ呼びとめ韋駄天神の旅
田中水桜
公益社団法人俳人協会 俳句文学館523号より