俳句カレンダー鑑賞 平成26年11月
- 俳句カレンダー鑑賞 11月
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茶の湯では、風炉を閉じて、陰暦十月朔日または十月の中の亥の日から四月まで、地炉をひらき火を入れる。
岡倉天心は『茶の本』の中で「われわれは<不完全>に対する真摯な瞑想をつづけているものたちである」と述べ、想像のはたらきで未完成を完成させると説いている。
茶室の儚さは藁ぶき屋根に、脆さは細い柱に、軽みは竹の支柱に暗示されている。茶室に差し込む光には低い軒が遮り、茶室と茶器がどれほど色あせてみえようとも、すべてのものが清潔で塵ひとつ見あたらない。永遠なるものは、素朴な環境の中に具体化される。
炉開きの後の今日の月明を、新しいと感じるのは、感性が常に研ぎ澄まされているから。余分なものを常に削ぎ落とし、永遠なる言葉を希求する精神が見出した月の光だ。(井越 芳子)炉開いてより月明のあたらしく
山本洋子
公益社団法人俳人協会 俳句文学館523号より