俳句カレンダー鑑賞 平成27年2月
- 俳句カレンダー鑑賞 2月
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一読、針供養という従来の季語のイメージからは思い及ばない、斬新な情景が顕ち現れる。
針供養は折れ曲がったりした、損ねた針を淡島に納め、豆腐にさして供養する行事。
裁縫をする人の減った昨今では、治療に用いる鍼も釣鉤も、同じように納められるようだ。
東京・浅草寺境内の淡島堂などは終日賑わう。早梅の匂う頃である。
この句は針供養から発想されて、針そのものに焦点が絞られている。
豆腐にさされた供養針を「光」と捉えた。その針がそれぞれ屹立して光を放ち、ひしめき合っているという。
早春の堂内の異空間が浮かび上がる。
針供養という季語がもたらす情緒的な世界とは全く異質な、硬質な雰囲気を醸し出す。
作者の提唱する「季題発想」が見事に結実した一句といえよう。(島田 藤江)針といふ光ひしめき針供養
行方克巳
社団法人俳人協会 俳句文学館526号より