俳句カレンダー鑑賞  平成27年4月

俳句カレンダー鑑賞 4月
風光るわけても人の像こそ 仲村青彦

 季は春。景色は明るく吹く風が鋭く光るような皮膚感覚に主眼がある。「わけても」「こそ」に挿まれる「人の像」を想像するに、例えば映画の撮影なら街の風景など大景から入り、個へカメラアングルをとる。幾つかの個のシーンが映し出される。若いカップル、中年の夫婦連れ、母娘らしきふたり、高校生のグループ、サラリーマンらしき二三人、或いは孤高の紳士かも知れない。
 彼らは春の装いをし、闊達な身ぶり手ぶりで楽しげな会話をし、または無言で通り過ぎて行く。ベンチには沈思黙考の人も...。読者は束の間、カメラマンになり、また映画監督になり、ゆっくりと「風光る」に戻る。
 作者自身過客であり、作者の眼に映る過客に対し愛を感じている。偶然の出逢い、必然の訣れにも作者の愛を想う。まさに人間讃歌である。 (宮尾 直美)
風光るわけても人の像こそ

仲村青彦

 社団法人俳人協会 俳句文学館528号より