俳句カレンダー鑑賞 平成28年2月
- 俳句カレンダー鑑賞 2月
-
野山の雪も解け始め、どんよりと鉛色をしていた空が明るくなって、光が眩しく感じられるようになった。山里に遅い春がやってきたのである。
冬の間、暖炉や囲炉裏を囲んで過ごしていた人々は、暖かい光に誘われるように外へ出る。誰もが活動的になり、村に活気が生まれる。近くの川は雪解け水が勢いよく流れ、水音を立てている。
木々から滴る雪解雫の音も心地良い。動物や小鳥は恋の季節となり、囀りが聞こえてくる。
万物が春を迎えた喜びに満ちて「放つ音楽」である。この「放つ」の措辞が効果的である。潤いのある大地と春の空という横に広がる景に対し、音楽がどこまでも直線的に力強く響いてゆく。
女神の左保姫の高らかに歌う美しい声も聞こえてくるようだ。第2句集『約束』所収。 (望月 澄子)空へ向け放つ音楽雪解村
今瀬剛一
社団法人俳人協会 俳句文学館538号より