俳句カレンダー鑑賞  平成28年2月

俳句カレンダー鑑賞 2月
白魚を汲む瓏銀の潮の色 茨木和生

 古くは家康も好物であったという白魚。佃島の白魚漁は有名となり、歌舞伎の名台詞にもなっているが、汚水のため絶滅し、今では東京湾で見ることができない。
 掲句の場所は熊野の南太田川。紀勢本線の鉄橋下あたりから大きく湾曲して広がる河口に、二十張りほどの四手網の足場が組まれる。1月の終わりの大潮の頃から始まる漁期は2カ月余。差し込んでくる潮に間を置かず四手網を入れて白魚を掬い上げる。漁法は手軽だがこの潮回りの動きの見極めが肝要なのである。
 その潮の色に着眼して「瓏銀」と捉えた。通常の「朧銀」と表記せず、「瓏」の字を当てたことにより、熊野灘の白波がよく伸びている早春の海の輝きも、はっきり見えてくる。
 熊野の海照りを受けて岬の山桜の蕾が膨らむのも間近い。第7句集『往馬』所収。(山内 節子)
白魚を汲む瓏銀の潮の色

茨木和生

 社団法人俳人協会 俳句文学館538号より
 古くは家康も好物であったという白魚。佃島の白魚漁は有名となり、歌舞伎の名台詞にもなっているが、汚水のため絶滅し、今では東京湾で見ることができない。
 掲句の場所は熊野の南太田川。紀勢本線の鉄橋下あたりから大きく湾曲して広がる河口に、二十張りほどの四手網の足場が組まれる。1月の終わりの大潮の頃から始まる漁期は2カ月余。差し込んでくる潮に間を置かず四手網を入れて白魚を掬い上げる。漁法は手軽だがこの潮回りの動きの見極めが肝要なのである。
 その潮の色に着眼して「瓏銀」と捉えた。通常の「朧銀」と表記せず、「瓏」の字を当てたことにより、熊野灘の白波がよく伸びている早春の海の輝きも、はっきり見えてくる。
 熊野の海照りを受けて岬の山桜の蕾が膨らむのも間近い。第7句集『往馬』所収。(山内 節子)