俳句カレンダー鑑賞 平成28年4月
- 俳句カレンダー鑑賞 4月
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この句と出会ったときのことを鮮明に覚えている。先師清崎敏郎指導の若手の会「青胡桃会」の投句の中で、この句が私の眼を射た。「あゝ、何て新鮮なイメージか」と。
果たして先生の特選であった。そのときの講評は「これも写生の句で新しみがある」と述べられたように記憶している。
写生句の幅の広さ、可能性をそのとき感じた。
シャム猫のあの碧緑の眼の色を見た瞬間、春の海の色=春潮の色と感受し、イメージした美意識に瞠目すると共に「二かけら」の表現にリアリティを感じたのである。
後年、貞雄師は「春になると海が見たくなる。そんな矢先、わが家の庭に一匹のシャム猫が迷い込んだ。そのトルコ石のような眼を覗き込むと、春の海が広がっていた」と記されている。 清新な一句である。
(伊東 肇)シャム猫の眼に春の海二かけら
鈴木貞雄
社団法人俳人協会 俳句文学館540号より