俳句カレンダー鑑賞 平成28年6月
- 俳句カレンダー鑑賞 6月
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平成20年の作。この句と出合ったとき、「あゝ、事に当たるときは、このような心掛けが肝要なのだ」と今さらにして思ったことであった。
句の主眼は「一呼吸」。何事においてもおろそかにしない作者の誠実さと責任感。冷静、沈着な一面が計らずも表現されたといえよう。
大切な取引も、電話やメール1本で片付ける昨今、一呼吸置いての返答は千金の重みがある。 秒単位の僅かな時間、思考を纏めて結論を下す微妙な間の取り方を衒いなく詠み上げ、瞠目させられる。
掲句、膝を正し、返答を待つ人物の緊張した面持ちが浮かぶ。折しも庭先の柚子の花の清々しい香が、開け放した座敷まで流れ込み、対峙する2人を和ませるかのよう。
清楚で地味な柚子の小花に、快諾の兆しが窺われる。第5句集『自在』に所収。(野上智恵子)一呼吸しての返事や柚子の花
千田一路
社団法人俳人協会 俳句文学館542号より