俳句カレンダー鑑賞 平成28年7月
- 俳句カレンダー鑑賞 7月
-
「菜殻火」大牟田支部吟行会での作である。暑さの中の吟行を終え、句会場に併置されている出土品の展示室を汗を拭き拭き巡られたのであろう。数多の遺物の中、碧玉製のみどり鮮やかな勾玉と副葬品の馬具を飾った金具の残片に目を止められたのはさすがである。吟行中心の作句を、永年続けられている俳人の眼力である。
掲句は、名詞と助詞のみの極限まで省略された作品であるが、そのことと上五の「涼しさは」の「は」の働きと相俟って、勾玉の碧と馬具の金に焦点が当たり、際立つ存在となった。結果として古代の形と色を留めたこの2つの出土品がいのちを得て、涼しさの象徴として一句の中で輝いているのである。
なお、ひふみ氏の初期の作に次の句がある。
〈勾玉は初めのかたち雪降れり〉(西村 蓬頭)涼しさは勾玉の碧馬具の金
野見山ひふみ
社団法人俳人協会 俳句文学館543号より