俳句カレンダー鑑賞 平成28年10月
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猪垣とは鹿や猪などの獣が田畑に侵入するのを防ぐためのもの。古くは石垣や土塁を積んだ本格的なものから、竹や枝つきの木で粗く編んだ垣までいろいろ。最近では手軽な電気柵も多い。
掲句は作者の第4句集『溯上』所収で自己の俳句の原郷を故郷山梨と見据えた時期の作品。あり合わせの材料で猪垣を組み、猪に寄るなとばかりブリキを打ち鳴らす。山梨も奥深い峡の村の景。掲句の隣には〈石打つて石ののしつて畑打てり〉の句。父祖の厳しい生活への思いが募る。
作者は忠実な写生を基本に抒情を謳い上げる。若くして草田男に師事し成田千空の後を継いで第5代萬緑選者。一時体調を崩されたが最近第6句集『急磴』を上梓される等、意気ますます軒昂。萬緑運営委員長、俳人協会監事。(藤埜まさ志)猪垣のブリキ叩けば日の落つる
奈良文夫
社団法人俳人協会 俳句文学館546号より