俳句カレンダー鑑賞 平成28年11月
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西宮市の海清寺境内での作品とお伺いする。
春夏秋冬、句材には事欠かない海清寺。中でも白眉は、初冬の懸大根。
茎漬のための大根干しが始まる。
境内には大きな銀杏の木が数本、10メートルにも達しようかという高さで、雲水たちの作務の大変なことが想像できる。
作務が終わり、銀杏の枝に白く光る懸大根はそれはそれは壮観である。
作者は見上げている内に、懸大根の後ろを高く遠く流れ行く雲に目が止まったのである。
大気の動きに添って自然に流れる雲と、大気の動きに関係なく雲水の作務によって木にとどまっている懸大根。作者は自然と人事、その対比にある種の感動を覚えながら、淡々と情景を写生したのである。一幅の水墨画に心の安らぐ思いである。(中谷まもる)雲はいき懸大根はとどまれり
後藤比奈夫
社団法人俳人協会 俳句文学館547号より