俳句の庭/第15回 柊  染谷秀雄

染谷秀雄
昭和18年(1943)8月31日東京都生。1966年「夏草」山口青邨に師事。1986年「屋根」斎藤夏風に師事。2017年3月「屋根」終刊に伴い、「秀」創刊主宰。「夏草」新人賞。俳人協会理事事務局長。日本文藝家協会会員。句集に『誉田』『灌流』。

 玄関脇に玉散らし仕立の柊がある。庭木のない新築の家を当て込んで植木屋が飛び込みでやって来た。引越したときには近所から幼木を何本かもらったがそれだけではいかんせん寂しく欲しかったことは事実だ。その植木屋は狭い土地にもかかわらず玄関には魔除けになるからと柊を薦めて植え、その他椿や黐、金木犀など植えていった。そしてかれこれ四十年が過ぎた。
 十二月の声を聞くと柊の花が咲き出す。小さくて目立ちにくい花で、香りで気づくことが多い。特に朝の出勤の刻には何かと時間に余裕がないためかじっくり見てないため、帰ってから気づくことがほとんどだ。この柊、白く可憐で小花が集まって一つの花のようにも見える。金木犀と同じモクセイ科のためかやさしい甘い香りは同じである。
 節分のときには毎年目刺を買って来ては焼いて頭を柊の小枝を剪って挿す。今では「柊挿す」行事は我が家の習わしとなって続いている。
 鳥も巣作りの頃になるとやってきては様子を窺う。鵯などは警戒心が強いためか玄関ドアを開けるたびにバタバタと羽音をたてて飛び翔って行く。辺りに小枝や棕櫚のようなものが落ちていて営巣がはじまったことを知る。やがて卵を抱く。葉に棘があることが天敵からの防衛になり、玉散らしの形が一定の雨も凌げ、日除けにもなり、目隠しになり得ることも好都合なのであろう。
 こうして柊は花だけでなく一年を通して愉しむ樹に成長してきた。今では我が家では魔除けの樹として家族を護ってくれている大切な樹木となっている。