俳句の庭/第39回 台風 染谷秀雄

染谷秀雄
昭和18年(1943)8月31日東京都生。1966年「夏草」山口青邨に師事。1986年「屋根」斎藤夏風に師事。2017年3月「屋根」終刊に伴い、「秀」創刊主宰。「夏草」新人賞。俳人協会理事事務局長。日本文藝家協会会員。句集に『誉田』『灌流』。

 夏休み真っ盛りの8月に入るとはるか南方洋上に熱帯低気圧がやたらと発生しやすくなる。ひとたび発生すると必ずといっていいほど台風となって発達して日本に襲いかかる。昨今の温暖化の影響により夏から秋にかけては海面水温が26~27度以上に上昇して発生し発達するメカニズムだ。太平洋高気圧が大きく張り出している時期は発生しても大陸の方に押しやられるので余り心配ないが、勢力が弱まってくる9月から10月にかけ偏西風も日本付近にあるためそれに乗って一気に急加速して日本付近にやってくる。いつも不思議に思うのは大陸に向けて発達した台風は必ずと言っていいほど90度、場合によってはそれ以上曲がって日本各地に甚大な被害をもたらす。それは日本近海の高気圧の張り出し方に関係しているようである。9月前後は日本へ進路をとりやすい気圧配置になりやすいため、上陸頻度も一層高くなる。そしてひとたび上陸すると我が家のような南に向いた雛壇形式の土地の形状に立つ木造家屋では夜、二階で寝ていると下から巻き上げられた強風で家毎揺さぶられ日本家屋特有の軒下に強風を巻き込んで屋根瓦が飛ばされはしないかと心配で寝ている気がしなくなる。台風による雨は貯水ダムの水甕に計り知れない恩恵をもたらす反面、自ら防ぎ切れない竜巻などの秋の「風」は何とも恐ろしく感じることが多い。そんな8月が我が誕生月である。