俳句の庭/第46回 太陽からもらった光 能村研三

能村研三
1949年、千葉県市川市生まれ。1976年より福永耕二に師事。 「沖」入会ののち、同人を経て2013年から主宰を継承。国際俳句交流協会副会長、千葉県俳句作家協会会長。「朝日新聞千葉版俳壇」選者。「読売新聞」地方版選者。「北國新聞」俳句選者。1997年、俳人協会新人賞を受賞。句集に『鷹の木』ほか7冊。他にエッセイ集。公益社団法人俳人協会理事長。

 今年の干支は兎なので、まずは月と兎の話から始めよう。月の影の模様が兎に見えることから、日本には「月には兎がいる」という伝承は古くから言い伝えられている。
 お月見といえば中秋の名月、十五夜であるが、この日に限らず、月を眺めていると心が和む。何気なく見上げた夜空に輝く月を見ると、ふっと思い浮かぶのが「月うさぎ」。月でお餅をついているというメルヘンも楽しい。
 ところで、先日新聞のコラムに「太陽からもらった光を、月は別の誰かに惜しむことなく与えている。」ということが書かれていて印象に残った。たしかに月の光は自ら放った光ではなく、太陽の光が反射しているだけで、月からの光は積極的で能動的な光ではない。しかし、単に極めて受動的な月からの光であっても、人間の心を慰め、癒してくれる力は持ち備えている。自ら発する光ではないので、決して押し付けがましいところもなく自然体で人間を照らしてくれるのである。
 登四郎の最晩年の句に、
 月明に我立つ他は箒草
という句がある。月明の中に自分と箒草だけが存在する不思議な空間で、何のひねりや衒いというものが一切ない、年齢を重ねなければ見えない無の境地の世界である。
 1月の満月のことをウルフムーンというそうだ。「狼月」と名付けられるのは、この時期によく聞かれる狼の遠吠えが由来になっているそうだが、今年は1月7日の16時45分に出るそうだ。