俳句の庭/第53回 梅雨の月暈 染谷秀雄

染谷秀雄
昭和18年(1943)8月31日東京都生。1966年「夏草」山口青邨に師事。1986年「屋根」斎藤夏風に師事。2017年3月「屋根」終刊に伴い、「秀」創刊主宰。「夏草」新人賞。俳人協会理事事務局長。日本文藝家協会会員。句集に『誉田』『灌流』。

 某青少年科学館の天文担当の人から問い合わせがあった。鷹羽狩行という俳人の句に〈暈といふ美しきもの梅雨の月〉という句について聞きたいという内容だった。
 現代語訳はどういうものか。また、「暈」とは「月暈」(げつうん)と解釈していいのか。ぜひご意見をお聞かせいただければといった内容だった。
 どうもプラネタリウムで映像を映しながら掲句を載せて説明したいとの事だった。自註であればそのまま伝えたかったが、どうも自註にはなさそうである。「暈」辞書には「つきがさ」とも「げつうん」とも書かれていて「月の周囲に見える光の環で構いません。」と答えた。
 梅雨の月ともなれば梅雨入りももうすぐだ。暦の上では梅雨は六月の入梅から一ヶ月間を指すが通常梅雨前線は六月の初旬から七月下旬まで日本近辺に停滞する。気象庁の季節予報の発表では今年は極端に早い梅雨入りの可能性は低いようである。日本列島の地形から言って梅雨入りも梅雨明けも地方によって違ってはいるがどこでも概ね六月初旬から七月末には梅雨明けになる。暈にかかった月を見るには何と言っても満月に近い前後の月にかかった雲がよろしい。今年は六月四日と七月三日が満月。この前後に見る暈雲は梅雨の月に相応しいものとなろう。
 梅雨の頃、満月前後にかかった雲はなかなか見ることが叶わないだけに雨が上がるのを待つ心持ちで構えていたいものだ。