俳句の庭/第78回 川を生む山の力 能村研三

能村研三
1949年、千葉県市川市生まれ。1976年より福永耕二に師事。 「沖」入会ののち、同人を経て2013年から主宰を継承。国際俳句交流協会副会長、千葉県俳句作家協会会長。「朝日新聞千葉版俳壇」選者。「読売新聞」地方版選者。「北國新聞」俳句選者。1997年、俳人協会新人賞を受賞。句集に『鷹の木』ほか7冊。他にエッセイ集。公益社団法人俳人協会理事長。

 私の家から50メートルも歩くと真間川に出る。春になると桜並木はお花見の人で賑わう。この真間川は下流が二つあり、一つは東京湾に直接流れるものと、江戸川に流れるものがある。川幅は10メートルにも満たない小さな川だが、決して侮ることは出来ない都市河川で、川が溢水し多くの住宅に大きな被害をもたらしたことがある。
 丁度その時、私は役所で河川工事担当していて、国から激甚災害の指定を受け数か月家に戻ることが出来ないほどその対策に追われたこともある。大学で河川工学を専攻していたので、国との折衝などに役立った。今でも河川学会の会員で、[河川文化]という雑誌が送られてくる。
 日本は、「海の国」であると同時に、豊かな「川の国」でもある。大小の河川は、上流から河口まで、多彩な風景と、文化・風土をかたちづくってきた。
 舟運と卅船、川の狩猟、渡しと橋、年中行事、信仰と伝承など、豊富な事例で語りつくす。
 かつて柳田國男は、「川は、日本の天然のもっとも日本的なるものであった。」と述べている。
 私の句に
  川を生む山の力や幟立つ
という句がある。川の源流はそのほとんどが山の滴りや清水がいくつも重なり合って一本の川の流れとなる。
 今年の5月に江戸川河畔にある里見公園に「川を生む」の句碑が建立されることになっている。その傍には伊藤白潮先生の
 来歴のやうに一本冬の川
という句碑が建っている。