俳句カレンダー鑑賞 平成23年7月
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東山回して鉾を回しけり
後藤比奈夫
第4句集『花匂ひ』所収。八坂神社に句碑となっている。この句は昭和52年7月の祇園祭吟行の「諷詠写生会」での作。四条烏丸の京都旅行会館が句会場で、私も同行していた。通りでの「辻回し」の写生。青竹を敷き水を撒き、一気に鉾を廻す。父は〈鉾廻すために四辻働ける〉などの句のあと、最後にこの句を作った。
この句は父が物理専攻であったところから、アインシュタインの相対性原理とかコペルニクス的発想などと評されることが多いが、父自身は、「鉾の前方に立って扇を振る扇方になって、自分が鉾を回しているつもり」と言っている。だからこそ「東山回して」と詠むことが出来たのであろう。 30年以上前の句にもかかわらず、いつまでもぴかぴか光る句と思う。この句は父自身が生涯の代表句と主張している。
(後藤 立夫)社団法人俳人協会 俳句文学館483号より