俳句カレンダー鑑賞  平成24年10月

俳句カレンダー鑑賞 10月
鷹渡る九十九島の明けの空 小倉 英男

 平成22年10月号「春嶺」に発表された句である。  作者はその前年9月、春嶺の同士5人と長崎県北部を吟行された。  平戸市の隠れ切支丹の民家や教会・遺跡を巡り、翌日は佐世保市へ移動。奇岩怪石に富む島々の九十九島を遊覧の後、夜は九十九島を眼下に望むホテルに宿泊された。  翌朝すっかり晴れ渡った九十九島の空を、南西へ向かって渡って行く鷹を詠まれたものである。  九十九島の近くに、標高568メートルの烏帽子岳が聳えている。  そこは毎年9月になると、朝鮮半島や中国等から対馬・壱岐を経てフィリピン以南へと渡る鷹の休息地となっている。  そこで一夜を過ごした鷹が、九十九島の空を飛んで行く。作者は運良く早朝飛び立った鷹が頭上を舞い、そして滑るように飛ぶ勇姿と巡り合ったのだった。(縣  恒則)
鷹渡る九十九島の明けの空

小倉 英男

 公益社団法人俳人協会 俳句文学館498号より